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福祉国家スウェーデンの子育て事情

少子化傾向を食い止めたスウェーデン

スウェーデン

スウェーデンも1999年には不況などの影響で合計特殊出生率(一人の女性が生涯に産む子供の数)が1.5まで落ち込んでいました。それからわずか10年後の2009年には1.94まで上昇しています。ここまで出生率が回復したのにはスウェーデンの子育て政策の効果が背景にあります。そんなスウェーデンの子育て事情はいったいどんなものなのでしょうか。

働く妊婦さんへの保障制度が充実している

働く妊婦さんが体に負担のかかる職務、例えば重いものを運ぶ作業や胎児への影響が心配されるような有害物質を用いた作業をしている場合は、会社は他の業務に配置転換をしなければならない義務があります。それが困難な場合、妊婦さんは妊娠手当を受け取ることができます。

身体に負担がかかるために妊娠手当を受給する場合は最長で出産予定日の60日前から11日前までの50日分給付を受けることができます。支給額は年間所得を365日で日割り計算した額の約77%となっています。支給されている額を見ると1人1日当たりの平均支給額は日本円で約8,100円です。

共働きを前提とした両親手当の支給

スウェーデンでは子どもが一人に対して、最大480日分の両親手当が支給されます。父親と母親にそれぞれ240日分が割り当てられますが、この手当はどちらか一方に譲渡することができますが、60日分は譲渡できないことになっています。ここがこの制度の良い点です。譲渡できない60日分があることによって父親の育児参加が促進されています。実際スウェーデンの町では平日にベビーカーを押して歩くお父さんの姿を良く見かけます。

また、両親学級に参加する際は出産前であってもこの両親手当を受給することができるようになっています。これによって両親学級への参加率が上がるという利点があります。 両親手当の1人1日当たりの支給額は平均7,500円です。

父親が子育て参加すると得するシステム

この両親手当には均等ボーナス制度というものがあり、両親手当を両親が均等に取得すればするほど手当にボーナスが加算されるシステムです。まったく均等に取得した場合は通常の手当にプラスして21万円程度が支給されることになります。

二人目を早く作ると得するシステム

一人目の子供が満1歳9か月に達する前に二人目を妊娠すると最初の子供と同額の両親手当が支給されるシステムになっています。

もし、一人目の出産で仕事を休んで両親手当を取得した場合、働いている時より収入が低くなります。直前の年間所得によって両親手当の額が決まるので、続けて第二子が生まれた場合、第一子よりも支給額が低くなってしまいます。そうするといったん職場に復帰してから第二子をつくろうとする人が増える可能性があり、出生率が低下する心配があります。それを避けるためにこのようなシステムを採用しているのです。

質の高い保育を行うプレスクール

スウェーデンでは幼保一体化がすすんでおり、就学前の教育に力を入れています。プレスクールはもっとも一般的な幼児教育施設です。1歳児の約半数、3歳児から5歳児の90%以上が通っていて3歳からは年間525時間まで無料となっています。

日本との大きな違いはプレスクールがきちんとした教育委機関として機能していること。1歳から教育が始まるという理念のもと、質の高い遊びや教育の場が提供されています。 といってもプレスクールは早くから読み書き計算などのいわゆる英才教育をするというものではなく、幼児期に適した心身の発達を目的としています。

保育士の社会的地位や給料も日本より高くなっています。さらに生徒6人程度に教師が1人つくので一人一人に目が行き届きやすく、きめ細かい保育が行えます。

また、6歳に達するとプレスクールより一歩進んだ学習をおこなう就学前学級に参加することができますが、この授業料は無料です。6歳児のほとんどが就学前学級に参加しています。

幼児を持つ親は6時間労働ですむ制度

幼児を持つ親は労働時間を6時間に短縮しても良いという権利が法律で定められています。この制度のおかげで、共働きでも子供を長時間保育させなくてもよくなっています。短縮した分の給料は出ませんが、その分は特別両親保険で補うことができます。

小学校から大学まで授業料が無料

日本でも高校の授業料の無償化が検討されていますが、スウェーデンではなんと大学まで無料。日本では一人大学を卒業させるまでの教育費に1千万円はかかるといわれていますから、とても魅力的な制度です。さらに高校までは1クラスの人数が少なく20人前後で学習しています。

手厚い保障を支えているのは高い税金

日本よりもずいぶん手厚い子育て支援ですが、これを支えるには財源が必要。スウェーデンの消費税は現在25%(食料品は12%)住民税も高いし、高額所得者は所得税も割増しされるシステムです。スウェーデンの子育て支援は、共働きによってなり立っているシステムと言えるかもしれません。ただ、子育て世代に関しては大学まで授業料が無料ですし、老人福祉も日本より保障が厚いので、日本の家庭のように教育費や老後のために必死に貯蓄する必要はないでしょう。

スウェーデンの仕組みを日本にそのまま持ってくるのは難しいかもしれませんが、学ぶべきところはたくさんあります。日本の働くお母さんが一番気がかりなのは保育の問題。預ける場所を確保することは基本中の基本ですが、その質も大変重要です。その点スウェーデンは非常に優れた政策を行っていると感じます。

また、父親の子育て参加を政府が後押ししているのも大変魅力的です。諸外国の良い所を取り入れつつ日本人のニーズに合った子育て支援が確立することを期待したいものです。そのためには私たちも、もっと税金のことを知り、子育てに対する考え方をしっかり確立しておくことが重要なのではないでしょうか。