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一人っ子政策で中国社会は変わった?

一人っ子政策とは

一人っ子政策で中国社会は変わった?1979年に中国国内の人口増加を抑制するために始まった政策。当時の中国は人口が増加の一途をたどり、食糧や資源の確保という観点から生育政策を推し進めることになりました。

当初は晩(晩婚)、少(少ない子供の数)、稀(長い出産間隔)をキーワードに始められましたが、1980年からより政策を強化し、一人っ子を推奨していきます。その後段階的に政策がすすめられ、1983年からは一人っ子政策を全面実施することになりました。

政策の効果によって出生率が持続的に低下した結果、2012年には1.21人まで下がります。

人口は4億人余り抑制され、目的は達成されたといえます。

一人っ子政策の弊害

戸籍外のこどもの増加

二人以上の子供を持った場合は高額の罰金を支払わなければなりません。罰則は金銭だけにとどまらず、「両親の昇格・昇給の停止」「学校への優先入学権の剥奪」「各種手当の停止」など、厳しい処遇が課せられます。

そうした不利益を避けるため、二人目を産んでも戸籍に入れず内緒で育てる親もいます。戸籍に入れない子は教育や医療などの行政サービスを受けられず生育環境が著しく悪くなります。またそのような子供たちは人身売買の対象となることもあり、問題となっています。

男女比のかたより

男の子が跡継ぎになるという漢民族の伝統や農村部の労働力確保のため、お腹の子供が女の子と分かった時点で堕胎するケースが多くなりました。2012年、男女の人口比率は女性100に対して男性117.7となっており、正常の範囲(105前後)をはるかに超えています。

女性が少なくなっているため、結婚できない男性が増加しています。先に述べた戸籍外の女の子を花嫁候補として売買することもあるようです。また、結婚を心配する親をなだめるため、サイトで調達した「レンタル恋人」を実家に連れて帰る人まで出てきました。

一人っ子の負担が増大

中国の子供たちは両親や祖父母から溺愛され、ひ弱に育つ子が多くなったといいます。彼らは小皇帝(小公主)と呼ばれ、他の世代とは違った価値観を持っているともいわれます。

一人で両親と4人の祖父母の面倒をみなければならない状況になり、大変な負担を強いられます。伝統的に老親のめんどうは子供がみるのが当然とする中国では、「子供が顔をみせない」とか「面倒をみてくれない」と訴訟を起こすケースもあり、国会では子供に定期的な帰省を義務付ける法律の制定まで検討しています。

法律が制定されれば、現在子育て世代となった彼らにとってはさらに負担が増えることになるでしょう。

高齢化と労働力人口の減少

中国の高齢者人口は今後確実に増えることが予測されており2015年には労働力人口が減少に転ずるという統計結果が出ています。2050年には人口の30%以上を高齢者が占める超高齢化社会を迎えるという試算があります。人口抑制政策によって高齢化のスピードをはやめる結果となっています。

罰金が行政の財源に

本来一人っ子政策を推し進めることを目的として存在するはずの罰金制度ですが、高額所得者の中には罰金を払ってでも2人目を持ちたいとする人も多く、その罰金は行政の財源として軽視できない額となっています。その既得権益による行政の腐敗が問題となっているうえ、一人っ子政策の担当者たちが2人目以降の子供を強制的に堕胎させたり、生まれたこどもを外国へ売り渡すなどの人道に反する行為を行うケースもあり批判の的となっています。

緩和され始めた一人っ子政策

2002年9月には夫婦とも一人っ子の場合、かつ地方政府が定めた条件を満たせば第2子を持つことが認められるようになりました。労働人口減少への危惧や男女比のアンバランスに伴う諸問題が深刻化していることを受け、2013年には夫婦のうちどちらかが一人っ子の場合、第2子を持つことが認められることになりました。

規制緩和でベビーブームが到来するか

規制が緩和されたからといって、子供が劇的に増えるかというと、どうやらそうでもなさそうです。規制緩和の対象となる都市部では他の先進国同様女性の高学歴化と社会進出が進んでいます。子育てのコストも高くなっていることから、子供をたくさん持とうと思う家庭は少なくなりました。「子供がたくさんいれば将来安泰である」という中国伝統の「多子多福」の考え方は過去のものとなりつつあります。

人口抑制には成功したものの、いびつな社会問題を生み出した一人っ子政策。その陰でたくさんの命が葬られてきたこと、中国人民が家族の形態の自由を奪われてきたことを思えば規制緩和は歓迎すべきことといえるでしょう。緩和後もさほど人口は増えないだろうと予測されてはいても、全面撤廃にいたらないのは先に述べた罰金の使い道など、行政の利権がからんでいることも一つの要因ではないかと言われています。一人っ子政策がもたらしたひずみはこれからも中国社会にたくさんの課題を残していくものと思われます。